子どもと紫外線
紫外線対策がもっとも必要なのは子供たち
― 紫外線Q&A 市橋正光著 p42より ―
赤ん坊の日光浴や子供の日焼けは健康に欠かせないと信じられてきましたが、実のところ、古くからの言い伝えで科学的な証拠はなにもありませんでした。
20世紀半ばまでは、世界中で太陽光線を浴びることが良いと信じられ、誰もが実行して来ました。
科学の発達のおかげで1960年前後から紫外線がDNAに傷をつけることがわかり、1980年代に入ると、皮膚ガンの発生率が高いオーストラリア、アメリカなどが、国をあげて紫外線対策を打ち出すようになったのです。
日光浴の良いところは精神的な開放感でしょう。
あとはビタミンD3 を作るくらいなのです。
一方、日光浴で太陽紫外線を浴びれば、表皮のほとんど全ての細胞や、一部真皮の細胞の遺伝子に傷がつきます。
赤ちゃんの頃から繰り返し浴び続ける太陽紫外線によって遺伝子に傷をつけ続けることになり、いつしか遺伝子に間違いが生じて正常な細胞ではなくなり、シミや皮膚ガンができることになるのです。
特に子供の頃は細胞分裂も大人に比べ盛んなため、太陽紫外線で傷ついた遺伝子が間違って修復される確立が高いといえます。
子供ほど紫外線の影響をたくさん受けている
― 紫外線Q&A 市橋正光著 p43.44より ―
3つの事実を紹介します。
まず、オーストラリアで行われた疫学調査で子供の頃に強い太陽紫外線を浴びる環境にいた人が、大人になって皮膚ガンになりやりやすいことが証明されました。
オーストラリアの白人は、イギリスなど年間の太陽紫外線量が少ないところからの移民です。子供の頃に移民すれば、長年にわたり大量に紫外線を浴びることになるわけです。オーストラリアで生まれた子供や10歳までに移民した人に皮膚ガンが多く発症することが分かったのです。
次に小動物を使った皮膚ガンの研究です。
マウスを若い頃に大量に紫外線を照射する群れと、成長してから大量の紫外線を照射する群れに分けて皮膚ガンのできる率を比べた結果、総紫外線の量は同じでも、若い週齢に紫外線をたくさん浴びた群れのマウスには皮膚ガンが早く、また多くできることが証明されました。子供の皮膚(若いマウスの皮膚)は大人に比べて分裂する回数が多いのです。そのため、紫外線で遺伝子に傷をつけたまま遺伝子DNAを合成するチャンスが多いのです。遺伝子が元の通りに治らないで間違うことも多くなります。
最後に日焼けと皮膚ガン発症の関連についての症例です。色素性乾皮症は、紫外線によって傷ついたDNAを元の通りに治すことができない病気です。普通の健康な子供と同じように外で遊べば、10歳までに顔など太陽に当たる皮膚に皮膚ガンができます。この病気を持った4歳と2歳の姉妹に同じようにサンスクリーン剤を塗り、帽子や傘を使って日焼けをしないようにケアーを徹底したところ、姉は13歳で、妹は23歳で始めて皮膚ガンができました。紫外線対策をはじめた小児期の二人の年齢差はたった2年ですが、皮膚ガンの発生を10年も遅らせることができたのです。
これまでの多くの疫学調査では、年間の紫外線照射量が多い地域の住民や、屋外労働者に皮膚ガンが多いということのほかに、同じ紫外線量でも子供の時に浴びるほど、紫外線の悪い影響が大きいということがわかっています。
一生に浴びる紫外線量のうち50%は、18歳ぐらいまでに浴びてしまうといわれています。
これまでにお話しましたいくつかの事実から、小児期から無駄な日焼けを避けることが、若々しく健康な皮膚を維持する秘訣であることがわかります。
つまり赤ちゃんのときより紫外線から皮膚を守ってあげれば、表皮の角化細胞や色素細胞ではDNAの傷もつきにくいし、間違って傷が治されることも少ないでしょう。
その結果、皮膚にシミも腫瘍もできにくく、皮膚の老化や皮膚ガンの発生を防ぐことができるのです。
文献(紫外線Q&A 市橋正光著 をご覧ください)